潤はブラウに連れられて潤が気絶していたと思われる建物の中から出ていた。潤は自分の記憶から、此処は自分の家の近所であることに気付く。どうやら今はまだ昼間のようだ。下校途中の小学生の姿も見えるし、買い物袋を自転車に乗せてよろよろ走る近所のおばさんの姿も見える。そして10分も歩いただろうか、人が段々と閑散とした場所になっていく。
これから一体どうしようとするんだ?
「それは付いてくれば分かりますよ。事情はさっき言ったとおり立て込んでいましてね、しばらくはじっ、としてくれれば嬉しいです」
尤も潤は後ろ手で手錠、口をガムテープで止められ、またそれらの拘束具は魔法で消されている。抵抗しようにも何もできない。
それに何かしようとしても・・・
「その通りです。僕は貴方の心を常に読んでいますから」
にっこりと笑い、更に言葉を続ける。
「お話したとおり、今は貴方の家に向かっています。何度も言いますが、そこで今何が起きているか申し上げることはできませんが、貴方がそれを見たとき何が起きるか予想できませんので・・・いえ、予想はしているのだからこそこの様にさせていただいております」
そんな事言われてもなぁ・・・こんなことされる謂れなんてないのに・・・
明日は塾あるのに・・・塾にどれだけのお金がかかっていると思っているんだ?それに本だって読みたいのに・・・
「そんな事をおっしゃられましても・・・まぁ、簡単な事ですよ。貴方は唯それを見ているだけで宜しいのですので」
そして家までほんの僅かしかなかった距離が零になっていく。それまでの間、潤は一人今までの事を思い出していた。河原で出会った謎の二人、時空遡行してその時代にやってきたのだと言う。しかも元の時代との間には時空断層があるのだとか。そしてわざわざその時空断層を超えて自分に会いに来たのだと言う。それからどうやら時間を越えて過去に来たらしい。そこにはブラウだとかという男に出会い、今拘束された中で自分の家に向かっている・・・。あまりに非現実すぎる・・・こんな事が起きていいのだろうか?こんな事が起きるくらいなら宝くじが当たる事にすがった方がまだ現実を見ている。
「さぁ、着きましたよ。もぅそろそろ貴方の知らなかった事がこれから起きる筈です」
そういうが速いが、ブラウは潤の体にステルス化する機械を装備させ始めた。そして手近の電柱に手錠の片方を固定させた。
一体何をするつもりなんだ?
「安心してください。これは貴方の安全を保障する方法ですから。唯貴方は見ていれば宜しいのです」
そしてブラウは立ち去った。ってこれからどうすればいいんだ!?
とパニックになっている内に潤の家から誰か人が出てくる。四十歳前後の若白髪の混じる男性が一人。そしてその後ろからはその妻かと思われる女性もまた出てきた。二人とも目の下にくまを携えている。雰囲気的に寝起きのようだが、その目には絶対の自信が目立つ。更に家の中からは十歳ほどと見られる一人の少年が出てきた。
ってこれは・・・まさか・・・そんな・・・
潤の姿は誰にも見えていないし、その声が回りに漏れる事が無い。だから彼がどのような状態にあるかは例えこれが物語か何かだとしても作者にすらわからなかっただろう。
家族と思われる三人は家の中から出たあと、今潤たちが来た道へと歩んでいく。その前方からは一台の自転車が走ってきてすれ違っていく。またすれ違いざまにその一家に向かって一言挨拶した。
「あ、お早う御座います、哀川さん。今教授の家に向かおうとしていたのですよ。例の研究の結果が出ましたので」
それに呼応して自転車の運転手に家から出てきた男性は返事を返した。
「嗚呼、やっと結果が出たのか。すまないがポストに入れておいてくれ。ちょっと出かけねばならないところがあるので。代金についてはいつもの様に大学に付けといてくれ」
「はい、分かりました。それではまた後日」
日常的な会話が過ぎていく。教授と呼ばれた男性は哀川享一。今までに多くの研究の末に様々な発明品を成功させている。それ故に多くの資産があるとも言われ、またお金に執着せず、発明するものの中には武器もあるとされ、政府機関などに影ながら“マッドサイエンティスト”と称されてもいる。
自転車に乗った人と別れ、また一家は歩み始めた。その時、前方五メートル先にある曲がり角から一台の自動車が曲がって来た。そしてその赤い車は彼ら一家の脇をすれ違っていく。
「今日は潤の誕生日ですからねぇ。何でも好きなものを買ってあげますよ」
「わーい!じゃあ僕、今年号の“魔法年鑑”と“グロック19”が欲しいな」
“バタッ”
「・・・っ!」
何かが地面に倒れたと思われる音と同時に、享一は潤の前に飛び出し、霧を出現させる呪文を唱えた。すると当たり一帯に白い靄が立ち込め、視界が悪くなった。
「・・・いいか潤・・・一度しか言わないからよく聞け・・・××××××・・・」
潤は納得のいかない顔をしつつも頷いた。その言葉はとても聞き慣れた言葉であり、また自分の父親が何故いきなりそのような事を言うのか分からないといった所だ。
“チュッ、チュッ”
聞きなれないその音が二回程聞こえた。否、周りは相当うるさかったので空耳かもしれないが、潤にはその音が聞こえた。そして傍らにいた享一が目の前で倒れた。
「・・・えっ、どうしたの?父さん?」
「早くもう一人を・・・いや、魔法でいいから早く」
そして潤は何がなんだか分からないまま意識を失った。
これから一体どうしようとするんだ?
「それは付いてくれば分かりますよ。事情はさっき言ったとおり立て込んでいましてね、しばらくはじっ、としてくれれば嬉しいです」
尤も潤は後ろ手で手錠、口をガムテープで止められ、またそれらの拘束具は魔法で消されている。抵抗しようにも何もできない。
それに何かしようとしても・・・
「その通りです。僕は貴方の心を常に読んでいますから」
にっこりと笑い、更に言葉を続ける。
「お話したとおり、今は貴方の家に向かっています。何度も言いますが、そこで今何が起きているか申し上げることはできませんが、貴方がそれを見たとき何が起きるか予想できませんので・・・いえ、予想はしているのだからこそこの様にさせていただいております」
そんな事言われてもなぁ・・・こんなことされる謂れなんてないのに・・・
明日は塾あるのに・・・塾にどれだけのお金がかかっていると思っているんだ?それに本だって読みたいのに・・・
「そんな事をおっしゃられましても・・・まぁ、簡単な事ですよ。貴方は唯それを見ているだけで宜しいのですので」
そして家までほんの僅かしかなかった距離が零になっていく。それまでの間、潤は一人今までの事を思い出していた。河原で出会った謎の二人、時空遡行してその時代にやってきたのだと言う。しかも元の時代との間には時空断層があるのだとか。そしてわざわざその時空断層を超えて自分に会いに来たのだと言う。それからどうやら時間を越えて過去に来たらしい。そこにはブラウだとかという男に出会い、今拘束された中で自分の家に向かっている・・・。あまりに非現実すぎる・・・こんな事が起きていいのだろうか?こんな事が起きるくらいなら宝くじが当たる事にすがった方がまだ現実を見ている。
「さぁ、着きましたよ。もぅそろそろ貴方の知らなかった事がこれから起きる筈です」
そういうが速いが、ブラウは潤の体にステルス化する機械を装備させ始めた。そして手近の電柱に手錠の片方を固定させた。
一体何をするつもりなんだ?
「安心してください。これは貴方の安全を保障する方法ですから。唯貴方は見ていれば宜しいのです」
そしてブラウは立ち去った。ってこれからどうすればいいんだ!?
とパニックになっている内に潤の家から誰か人が出てくる。四十歳前後の若白髪の混じる男性が一人。そしてその後ろからはその妻かと思われる女性もまた出てきた。二人とも目の下にくまを携えている。雰囲気的に寝起きのようだが、その目には絶対の自信が目立つ。更に家の中からは十歳ほどと見られる一人の少年が出てきた。
ってこれは・・・まさか・・・そんな・・・
潤の姿は誰にも見えていないし、その声が回りに漏れる事が無い。だから彼がどのような状態にあるかは例えこれが物語か何かだとしても作者にすらわからなかっただろう。
家族と思われる三人は家の中から出たあと、今潤たちが来た道へと歩んでいく。その前方からは一台の自転車が走ってきてすれ違っていく。またすれ違いざまにその一家に向かって一言挨拶した。
「あ、お早う御座います、哀川さん。今教授の家に向かおうとしていたのですよ。例の研究の結果が出ましたので」
それに呼応して自転車の運転手に家から出てきた男性は返事を返した。
「嗚呼、やっと結果が出たのか。すまないがポストに入れておいてくれ。ちょっと出かけねばならないところがあるので。代金についてはいつもの様に大学に付けといてくれ」
「はい、分かりました。それではまた後日」
日常的な会話が過ぎていく。教授と呼ばれた男性は哀川享一。今までに多くの研究の末に様々な発明品を成功させている。それ故に多くの資産があるとも言われ、またお金に執着せず、発明するものの中には武器もあるとされ、政府機関などに影ながら“マッドサイエンティスト”と称されてもいる。
自転車に乗った人と別れ、また一家は歩み始めた。その時、前方五メートル先にある曲がり角から一台の自動車が曲がって来た。そしてその赤い車は彼ら一家の脇をすれ違っていく。
「今日は潤の誕生日ですからねぇ。何でも好きなものを買ってあげますよ」
「わーい!じゃあ僕、今年号の“魔法年鑑”と“グロック19”が欲しいな」
“バタッ”
「・・・っ!」
何かが地面に倒れたと思われる音と同時に、享一は潤の前に飛び出し、霧を出現させる呪文を唱えた。すると当たり一帯に白い靄が立ち込め、視界が悪くなった。
「・・・いいか潤・・・一度しか言わないからよく聞け・・・××××××・・・」
潤は納得のいかない顔をしつつも頷いた。その言葉はとても聞き慣れた言葉であり、また自分の父親が何故いきなりそのような事を言うのか分からないといった所だ。
“チュッ、チュッ”
聞きなれないその音が二回程聞こえた。否、周りは相当うるさかったので空耳かもしれないが、潤にはその音が聞こえた。そして傍らにいた享一が目の前で倒れた。
「・・・えっ、どうしたの?父さん?」
「早くもう一人を・・・いや、魔法でいいから早く」
そして潤は何がなんだか分からないまま意識を失った。
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